第一次世界大戦と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
【目次】
・まとめ
7月28日は「第一次世界大戦開戦記念日」
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。7月28日は「第一次世界大戦開戦記念日」に制定されています。第一次世界大戦は1914年7月28日にオーストリアがセルビアに宣戦布告したことではじまったものです。遡ること1914年6月、オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者であったフランツ・フェルディナント夫妻がセルビア人の青年に銃撃されるというサラエボ事件が第一次世界大戦のきっかけとなっています。この暗殺事件後、ドイツ・オーストリア・オスマン帝国・ブルガリアで構成された同盟国と三国協商を形成していたイギリス・フランス・ロシアを中心とする連合国の2つの陣営に分かれ、日本・イタリア・アメリカ合衆国も後に連合国側に加わる形で参戦しました。このように、非常に多くの国々が参戦したため「世界大戦」とよばれるようになったわけです。
第一次世界大戦は長期化し、一般市民への統制は強化され、海上封鎖の影響により植民地との連絡が断たれた同盟諸国は経済が疲弊しました。また、1918年には、トルコとオーストリアで革命が発生し、帝国性が瓦解しました。さらに、ドイツでも11月にキール軍港での水兵の反乱をきっかけに、当時のドイツ皇帝であるヴィルヘルム二世は退位に追い込まれ、これがきっかけとなって第一次世界大戦は終結しました。しかし、5年にわたる戦争において、900万人以上の兵士が戦死することになりました。
では、心理学と第一次世界大戦には、どのような関係があるのでしょうか。まず、第一次世界大戦後の兵士の精神的問題を心理学者のマイヤーズが砲弾ショックと名づけたということが挙げられます。その後、この精神疾患は戦争神経症とよばれるようになり、最終的には心的外傷後ストレス障害(PTSD)とよばれるようになります。当初は戦争のみが疾患の原因と考えられていましたが、後の研究によって災害・事件・事故などのトラウマ経験は全てPTSDの原因となることが判明したわけです。つまり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究や治療・支援は第一次世界大戦がきっかけだったわけです。
デイヴィッド・ウェクスラー
ルーマニア生まれの心理学者であるデイヴィッド・ウェクスラーも、第一世界大戦がきっかけとなり、今にもつながる心理学的な偉業の1つを成し遂げています。ウェクスラーは第一次世界大戦中にアメリカ陸軍と共同で被徴兵者を選抜するための心理検査の開発に従事しました。これが後の知能検査・発達検査の開発に繋がっていきます。
ロバート・マーンズ・ヤーキーズ
ロバート・マーンズ・ヤーキーズはアメリカの心理学者・霊長類学者です。ヤーキーズは第一次世界大戦中に陸軍アルファ(Army Alpha ・ アルファ検査)とよばれる新兵に対する大規模な心理テスト・プログラムの立案・施行に貢献しています。これも、ウェクスラーと同様に、その後の知能検査・発達検査の開発へと繋がっていきます。
エーリヒ・ゼーリヒマン・フロム
エーリヒ・ゼーリヒマン・フロムはドイツの社会心理学・精神分析家・哲学者であり、彼もまた、第一次世界大戦をきっかけとした研究活動をしています。フロムは精神分析の学派としては、新フロイト派の代表的な人物であり、フロイトが提唱したリビドー論に基づいた生物学的立場よりも社会的・文化的要因を重視する立場でした。特にフロムは社会経済的な条件とイデオロギーの媒介項として社会的性格の概念を提示したことで有名です。また、社会的性格の概念は後の大衆社会論に大きな影響を与えました。フロムは亡命先のアメリカで執筆・出版した『自由からの逃走』において、第一次大戦後のドイツで破局的なインフレが進むと同時に伝統的権威が解体し、下層中産階級は経済的・道徳的に打撃を受けたのではないかとしています。
この社会層の抱く無力感や怒りは、権威主義的な社会的性格として先鋭化し、これがナチスのイデオロギーを受容する素地となったとのではないかということです。つまり、第一次世界大戦が当時のドイツ社会に及ぼした悪影響が、そのまま第二次世界大戦にもつながっていったということを示しています。この分析を通じてフロムは、近代人が伝統的権威や束縛から自由になった反面、自由であるがゆえの孤独感・不安感(自由への恐れ)にとらわれており、この恐れから逃避して非合理的権威に服従する危険性を秘めていることを明らかにしました。
まとめ
このように、第一次世界大戦が直接のきっかけとなって、心理学においても様々な研究や開発が進められたのです。
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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
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